Issue

これから進学する高校生たちへ、

安心して利用できる奨学金制度を。

 現在、日本の大学生の約2人に1人が何らかの奨学金制度を利用して大学等に進学しています。一般的に奨学金(Scholarship)は給付型を指しますが、残念ながら我が国においてはその多くが返還を要する貸与型奨学金であり、事実上の借金(Loan)です。大学等を卒業後、約15年から20年にわたって返還していかなければなりません。
 主に、奨学金制度の利用を決めるのは、受験を控え、志望する学校を考え始める高校3年生のときです。受験の合否も進学先もわかりません。大学等を卒業した後、自分はどのような仕事に就くのか、働き続けて奨学金の返還を続けることができるのか。高校生にとっても、その保護者の方にとっても、先が見えず保証もない中で、事実上の借金を申し込むことはとても重たい決断です。
 大学の授業料は高騰し続けています。生まれながらの家庭の経済状況によって、望んだ道を目指すことができない学生がいます。これからの日本社会を支える高校生たちに、ぜひ真の奨学金である給付型奨学金を利用して、安心して学んでほしい、これが私たちの思いです。

安心して学習・研究を続けられるように。

学業よりバイトを優先しなければならない今を変えたい。

 大学生のアルバイトを取り巻く状況が深刻化しています。現在では「学費や生活のため」にアルバイトを行っている人が多く、経済的に余裕があったかつてとは異なり、学生生活を維持するために必要不可欠なものへと変わっています。掛け持ちや10日を超える連勤、深夜までの勤務など、半期ごとの学費納入期日に間に合うようにアルバイトに明け暮れている学生もいます。
 また、こうした学生の経済状況に付け入り、法令に違反するような働かせ方をしたり、授業や試験よりもアルバイトを優先するよう強いるなどの企業側の行為によって、授業や研究に支障が出ている学生もいます。いわゆるブラックバイト問題です。
 授業料が物価の上昇を凌駕する勢いで高騰し続けている今、日本の学生がお金の心配なく本業である学業、研究を続けられるよう、給付型奨学金制度の拡充とともに、学生生活を支援する諸制度の整備が必要です。

返還に困ったとき、

真に支えとなる救済制度を。

 現在、収入が低い、失業した等家計が厳しくなり、奨学金の返還が困難となったときには、減額返還制度や返還期限猶予制度といった救済制度が用意されています。この制度の存在について広く返還当事者の皆さんに知って頂きたいと考えています。また、この制度については利用できる年収や年数には制限がかけられています。返還に困った人や、苦しい家計状況の中でも無理をしながら返還を続けている人がこうした制度を安心して利用することができるよう、既存制度の周知徹底や利用要件の緩和・拡充、さらなる救済制度の整備・充実を求めていくことが必要です。

Vision

わたしたちがめざす社会

だれもが学べる社会をめざして

Mission

次なる目標

 後述のResultに記したように、2012年に4つの目標を掲げてスタートした私たちですが、これまでに2つの大きな成果がありました。私たちは、安心して利用できる奨学金制度の充実・発展を主軸に、学費・入学金の負担軽減なども含めて、だれもが安心して学ぶことのできる社会の実現をめざして、次の通り新たな目標を設定し、今後も活動を展開していきます。

  • 給付型奨学金制度の拡充
  • 無利子奨学金制度の拡充
  • 私学助成金の予算拡充
  • 返還困難者への救済制度の遡及適用
  • 返還金の充当順位の変更

Result

2つの大きな成果

 私たちが活動を始めたわずか2年後の2014年には、返還期限猶予制度の上限延長や延滞金賦課率の引き下げ、無利子奨学金制度の拡充が実現しました。そしてその3年後にはわが国で初めてとなる給付型奨学金制度の創設が実現しました。
 
 私たちは2012年に、次の4つのことを掲げて会の活動を開始しました。

  1. 給付型奨学金制度の創設
  2. 無利子奨学金制度の拡充
  3. 返還期限猶予制度の上限撤廃
  4. 私学助成金の予算拡充

 その後、2013年には、法律家や学者を中心に「奨学金問題対策全国会議」という団体が結成されました。この全国組織の結成は、その後の数々の奨学金制度の改善に最も大きな影響をもたらしました。そして全国各地でこうした活動が芽吹いていくと、メディアによる報道も増え、奨学金問題が広く国民に認知されるようになりました。これらの奨学金問題に注目した活動により、2014年には延滞金賦課率は10%から5%への引き下げとなり、返還期限猶予制度上限年数は5年から10年への延長され、無利子奨学金制度の拡充が実現し、日本の奨学金制度は一歩前進しました。
 そして2017年には、我が国の公的な奨学金制度としては初めて、返還の必要がない給付型の奨学金制度の創設が実現しました。2012年から地道に続けてきた私たちの活動と、奨学金問題を社会全体の問題として捉え、相談活動や政策活動といった幅広く多様な活動を展開した「奨学金問題対策全国会議」の活動が結実した瞬間でした。

※このページでは、特に記載がない場合「奨学金」とは、独立行政法人日本学生支援機構の実施する奨学金制度(第1種奨学金制度(無利子貸与型)、第2種奨学金制度(有利子貸与型)、給付型奨学金制度)を指します。