2020年(令和2年)10月7日
愛知県 学費と奨学金を考える会
日本社会における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大は、緊急事態宣言後に一定の落ち着きが見られたものの、その後6月に入り再び新規感染者が急増しました。2020年3月以降、感染拡大を防止するため、外出や移動の自粛、経済活動の縮小を伴うさまざまな施策などが講じられてきましたが、今なお私たちの暮らし、雇用、経済には深刻な影響が生じています。感染症の終息と暮らしが安定するまでには今後さらに時間を要することが予想され、またこれからも予断を許さない状況が続いています。
多くの大学、大学院、専門学校等(以下、大学等)では春学期にオンライン授業を取り入れ、対面授業を控えたり、キャンパスの立ち入りを制限したりするなどの感染防止措置を行ってきました。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大は、学生の生活や学習環境において多大な影響を与えています。また、アルバイト先の休業やシフトカットなどによって学生の経済的困窮も生じており、依然として問題となっています。
― 大学等では
9月に入り、大学等は秋学期を迎えました。春学期に延納手続きをした授業料の支払い期限が到来する学生、春学期は何とか授業料を支払うことができたがコロナ禍によるアルバイト先の休業やシフトカット等による減収により秋学期開講までに必要なお金を貯められなかった学生、半期休学の手続きをした学生の復学など、根本的な負担減とならない「一時的な負担の先送り」によってなんとか春学期の間の学生生活を継続してきた学生たちが、再び先行きの不安な状況に陥ることは、想像に難くありません。
― 高校等では
また、高校生たちにとって、これから到来する進路選択、受験にも新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大は大きな影響を及ぼすこととなります。コロナ禍の影響が翌年に渡って長期化することを考えれば、親の失業、休業、減収や雇用の不安定化、家計の困窮から、或いは将来の困難な状況を見込んで進学を断念したり、希望した進路を変更する生徒が増加する危険性は高いと思われます。
私たち愛知県 学費と奨学金を考える会は2020年(令和2年)5月31日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大による学生や若者への深刻な影響を鑑み、9つのことを求める「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に係る奨学金制度に関する要望」を発表しました。
対して、政府はこれまでに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の及ぼす影響に対する学生支援の施策として、高等教育修学支援新制度及び貸与型奨学金の家計急変対応、学生支援緊急給付金の創設などを行いました。しかしその支援要件は厳格であり、対象となる学生数は極めて限定されています。
こうしたコロナ禍による学生生活に対する経済的影響と、これを救済するために打ち出した各種施策については、政府がその効果を測定し、必要な見直しをしていく必要があります。しかし、政府は大学等の休学、中退者の人数やその推移などのデータさえ調査・公表していません。コロナ禍による学生生活への影響が深刻化していることを踏まえ、休学者・中退者の人数やその推移のデータは、学生が置かれている現状を明らかにするとともに、各種施策の効果を測定するひとつの重要な指標となります。
以上の経緯から、私たちはすでに発出した9つの要望を継続して求めていくとともに、加えて次のことを求めます。
1. 学生生活への影響と、これを救済する支援施策の効果を測定してください。
政府は、過去3か年及び2020年4月以後の大学等における休学者、中退者の半年ごとの人数とその推移、その他新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による学生生活への影響とこれを救済する支援施策の効果を測定できる事項について調査し、これをすみやかに公表してください。また、この調査と結果の公表は単発で終えることなく、今後も半年ごとに継続して実施してください。
2. さらなる支援施策を講じてください。また、支援施策の周知を徹底してください。
政府は、高校生等が安心して希望する進路を選択できるよう、給付型奨学金制度、授業料減免等の要件を緩和して対象を拡大するなど必要な支援施策を講じ、またこれら支援施策の周知を徹底し、家庭の経済的事情により進学を断念、或いは進路を変更することがないようにしてください。
3. 学費の延納期限の延長、分納回数の増加を行ってください。また、制度の周知を徹底してください。
各大学・短大・専門学校は、秋学期の学費の延納期限の延長、分納回数の増加を可能な限り行ってください。また、秋学期の学費の支払いが困難な学生に対し、延納・分納等の制度の周知を徹底し、これに対応してください。
4. 経済的に困窮し休学を希望する学生に対して、休学費用を請求しないでください。
休学する学生に対し休学費用を請求している各大学・短大・専門学校は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響によって経済的に困窮し、休学を希望する学生に対して、休学費用を請求しないでください。それが困難である場合には、休学費用の可能な限りの減額を行ってください。
2020 年(令和2年)5月31 日に発表した、弊会からの9 つの要望をまとめた「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に係る奨学金制度に関する要望」は以下からご覧ください。